日本仏教のはじまりは中国で広がった大乗仏教

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中国で広がった大乗仏教の教え

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日本の仏教は大乗仏教の教えに基づいており、自らが悟りのために精進するとともに他人の救済のためにも尽くすことを目的としています。僧院で閉鎖的に自らの悟りのために修行に励むスタイルではなく、禅の実践や念仏によって悟りに到達できるという教えです。僧侶だけでなく民衆も救われるため、大乗仏教は長い歳月を経て、一般庶民にも定着してきました。

大乗仏教は2世紀頃に北インドの僧侶・龍樹(ナガールジュナ)によって体系化され、主に東アジア諸国に根づきました。ブッダのもっとも基本的な教えを「中道(ちゅうどう」と説き「すべての存在は永続的ではない」と主張しています。この考え方は中国の土着信仰である「道教」の教えとよく似ており、中国全土に広く伝わりました。

その後、韓国では儒教と結びつき、日本では神道と結びつき、それぞれ独自のスタイルで発展しています。大乗仏教は土着の信仰や文化に溶け込み、変化に柔軟に対応できたため、大きな宗教戦争を生むことなく、それぞれの土地で発展を遂げたと考えられます。

中国の仏教=釈迦の「空」+老子の「無」

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中国仏教は紀元前2世紀頃にシルクロードの交易で、経典や習慣がもたらされたことにより徐々に根付いていったといわれています。仏教の教えは中国の老荘思想と結びつき「格義仏教」として、中国・漢王朝時代(紀元前206年-221年)に盛んになりました。

格義仏教は世俗の世界を捨て修行のみに身を置くことから小乗仏教の流派とされています。格義仏教は、釈迦の「空」と老子の「無」の考え方を同じように捉えた教えでしたが、この頃はまだ一般庶民には普及しませんでした。

中国仏教のはじまりは経典の翻訳

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中国各地では王朝に仏教が根付き、仏教に深く帰依していた王も少なくありません。道安は中国に招かれたインドの僧の一人です。道安は老荘思想になぞらえた格義仏教を批判し、本来の仏教の教えを伝えました。

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その次に中国仏教に大きな功績を残したのが鳩摩羅什です。鳩摩羅什は現在でも仏教経典としてよく知られる「法華経」や「阿弥陀経」を中国語に翻訳した名僧で、訳語の正確性が極めて高いといわれています。経典によって中国に正しい教えが伝わり、仏教の盤石な礎ができました。

南北朝時代(219年-580年)に仏教は国家から篤い保護を受け、次第に一部の特権階級のものとなっていきました。国家に支配下に置かれた仏教に危機感を抱き主張し続けたのが慧遠(えおん)です。慧遠は廬山に白蓮社という念仏結社を設立しました。世俗の権威に臆することなく、仏法を説く慧遠は多くの僧侶に支持され、その教えはのちに浄土教へと発展を遂げます。

中国でもっとも普及した浄土信仰と禅

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中国の仏教は唐時代(618年-906年)に全盛期を迎えます。仏教が中国に到達してから1世紀を超え、中国の文化と統合しながら、深く定着していきました。

唐時代にもっとも普及した信仰が「浄土」と「禅」です。慧遠を始祖とする浄土教はブッダの信仰を信じていれば、人々が堕落したどうかは関係なく、悟りを手に入れることができると説きました。この教えは「他力本願」とよばれ、いかなる悪人も救われるという単純な信仰で民衆にも広く信仰されました。

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一方、禅は禅の実践(坐禅)こそが悟りを導くと説いています。禅宗は他の宗派に比べ後発であったため、山中に寺院や道場を開くこととなり、托鉢によって日々の食事を賄うことが困難になりました。このような事情もあり、自給自足が必要となったことで日常の作務すべてが修行と捉えられるようなりました。

「一日なさざれば一日食うべからず」

百丈懐海

これは百丈懐海(ひゃくじょうえかい)という禅僧の有名な言葉です。「一日食べるためにはその一日分を働いて食べ物を作りなさい」という意味で、日本人にも馴染みのある日常の教訓です。

経典に教えによって分かれた流派

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中国では玄奘三蔵や真諦三蔵などによって多くの仏典が翻訳され、ブッダの教えに沿った大般若経や大毘婆沙論などの経典がまとめられ、現在の仏教の基礎ができました。経典ごとの教理研究から、経典に基づいた宗派が生まれました。

例えば、成唯識論を継承する「法相宗」、華厳経を根本経典とする「華厳宗」、解離津を重んじる「律宗」などがあります。これらの宗派は奈良時代に日本に伝えられ、主に奈良にある有名な寺院がこれらの宗派に属します。

仏教の起源であるインドはイスラムの征服によって衰退しましたが、中国仏教は独自の発展を遂げ、朝鮮・日本へと伝えられました。中国では1949年に文化大革命が起き、すべての宗教が一掃されたため、多くの仏教遺跡が取り潰されましたが、現在も一般庶民に篤く信仰されています。

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