【びあけん3級】ビールの定義は時代によって変わる?!

ビール

ビールとはどんな飲み物ですか?

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ビールという言葉を聞くと、どんな飲み物を思い浮かべるでしょうか?黄金色をした苦みのある飲み物で、グラスに注いだ時に白い泡ができるアルコール飲料。一般的にはこのような回答になるでしょうか?ビールの歴史は大変古く、かつて大航海時代のヨーロッパでは「腐らない水」として重宝されてきました。

ビールは世界的に愛されるアルコール飲料ですが、その種類は多様です。日本ではビールのほかに、発泡酒やリキュール(発泡性)など、ビールではないけれど、ビールテイストの飲料が存在します。今回は日本のビール系飲料についてご紹介します。

ビールの原料は麦芽・ホップ・水

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ビールは麦芽・ホップ・水を原料としたアルコール飲料です。ビールは麦芽によって水を発酵させ、酵素によってアルコールと炭酸ガスを発生させます。ホップがビール特有の苦みや香り、泡を生成し、ビールが出来上がります。

麦芽の焙煎や発酵などは世界でさまざまな製法があり、見た目も味もまったく異なります。日本の酒税法では原料の違いによって、ビール系飲料を3品目(①ビール ②発泡酒 ③その他の発泡性酒類)に分けています。

ビール・発泡酒・新ジャンルの違い

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日本のビール類は酒税法によると「発泡性酒類」に該当し、①ビール ②発泡酒 ③その他の発泡性酒類 の3種類の項目があります。ビール・発泡酒・その他の発泡性酒類の違いは、おおまかにいうと原料・副原料・アルコール度数・税率が違います。発泡性酒類のなかで麦芽の使用量が50%以上、副原料をが5%以下の規定を満たしているものがビールとされ、それ以外が発泡酒・その他の発泡性酒類(リキュール)です。いずれもアルコール度数は10度未満であることが条件なります。

発泡酒の売れ筋としては低糖質や機能系ビール、その他発泡性酒類はノンアルコールやフレーバービールなどが挙げられます。ビールよりも価格が安く、幅広い風味やテイスト、健康飲料としての要素が人気です。

2021年現在ビール類はこのように定義されていますが、これまで酒税法改正によってビールの定義は変わってきました。2023年10月に予定されている法改正においては「その他発泡性酒類」のなかで、「香味・色沢その他の性状がビールに類似するものとして政令で定めるもの」が発泡酒に品目が変更されることが決まっています。

ビール・発泡酒・その他発泡性酒類の税率

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2021年現在、発泡性酒類における3項目の税率はそれぞれ異なります。ビールの税率が1缶(350㎖あたり)54.24円でもっとも高く、発泡酒・その他の発泡性酒類(新ジャンル)が続きます。大手スーパーマーケットの販売価格の相場を見てみると、大手5社の定番ビール1缶(350㎖)が約200円、発泡酒が150円、その他発泡性酒類(リキュール)が120円程度で、近年のビール市場ではコスパのよい発泡酒やその他の発泡性酒類のシェアが拡大しています。

ビール350㎖換算54.24円
発泡酒350㎖換算46.99円
新ジャンル350㎖換算37.8円
350㎖あたりの酒税

2026年10月の法改正でビール類の税率が統一化

2026年10月のビール税率改正で、すべてのビール類の税率が統一されます。1缶(350㎖)あたりの税率が約54円の税率になることが決定しており、現在3品目の発泡性酒類は段階的に税率改定が行われています。2021年度現在の税率は以下のとおりで、2023年10月にビールの減税、発泡酒・旬ジャンルの増税が予定されています。

ビールとは?

ビールの定義を改めて振り返ってみましょう。2021年現在、国税庁ではビールを次のように定義しています。

 麦芽、ホップ及び水を原料として発酵させたもの
 麦芽、ホップ、水及び麦その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもの(その原料中麦芽の重量がホップ及び水以外の原料の重量の合計の百分の五十以上のものであり、かつ、その原料中政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の百分の五を超えないものに限る。)
 イ又はロに掲げる酒類にホップ又は政令で定める物品を加えて発酵させたもの(その原料中麦芽の重量がホップ及び水以外の原料の重量の合計の百分の五十以上のものであり、かつ、その原料中政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の百分の五を超えないものに限る。)

ビールの定義 ※国税庁 https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/sake/abc/abc-beer.htm

わかりやすく、まとめると以下のようになります。

  • 麦芽・ホップ・水を原料とすること
  • 麦芽がホップと水以外の重量の50%以上になること
  • 副原料が10%を超えないもの

日本の酒税法においては、上記の基準を満たす飲料をビールとしています。酒税法の改正によって、これまでビールの定義は変わってきており、2023年には現在第3のビールと呼ばれているジャンルのビールが「発泡酒」に区分される予定です。世界的にも情勢によって、ビールの定義は変わっているため、ビールは一概に定義できないといえるでしょう。

大手ビールメーカーの定番ビール

日本のビール市場を牽引しているのはアサヒ、キリン、サッポロです。Amazonやビック酒販・その他のランキングを見てみると、アサヒスーパードライ・キリン一番搾り・サッポロ黒ラベルが3強といえるでしょう。販売実績については2020年からアサヒが開示していないので、詳細は不明ですが、2020年にキリンビールが11年ぶりにアサヒを抜いたといわれています。アサヒビールは飲食店向けの業務用に力を入れており、キリンは家庭用の販売が強いことも影響しているようです。

日本のビールのテイストといえば、キレとのどごしがスッキリしたドライが主流です。「くーぅー!」という飲み口が醍醐味ですが、このドライテイストを提唱したのが、アサヒスーパードライです。アサヒスーパードライは日本食に合うビールとして開発されました。

他社も追随して、苦みや奄美を抑えて、のどごしのよいスッキリしたドライのビールを販売するようになりました。ビールは原料の9割が水で出来ています。日本の水は軟水でやわらかいので、炭酸がよく効いたドライな風味と相性がいいのかもしれません。

おすすめのビール:アサヒスーパードライ生ジョッキ缶

アサヒスーパードライ生ジョッキ缶は2021年4月6日に全国のコンビニエンスストアで先行発売された新商品で、缶なのにサーバーで入れたような泡が楽しめる缶ビールです。缶のふたが全開に開き、中からみるみる泡が出てきます。泡はきめ細やかでふんわりしており、飲食店で入れてもらうサーバーの泡よりも美味しいかもしれません。

キンキンに冷やして飲むと泡の出方が適量です。飲んでもまた泡がまた浮き上がってくるので、何度も泡を楽しめます。コンビニ先行発売開始から注文が殺到し、出荷停止の状態が続いていましたが再開したようです。日本初のフルオープンで、泡が生ビールのように楽しめる缶ビール、ぜひ一度試してみてください。病みつきになるはず間違いありません。

発泡酒とは?

発泡酒とはビールの基準を満たしていないビール系飲料で、国税庁のウェブサイトでは下記のように記されています。

発泡酒は、麦芽又は麦を原料の一部とした発泡性のある酒類で、具体的には、A 麦芽の使用割合が50%未満のもの、B ビールの製造に認められない原料を使用したもの、C 麦芽を使用せず麦を原料の一部としたものが該当します。

なお、発泡酒については麦芽の使用割合により税率が3分類に区分されています

発泡酒は戦時中にビールの代用飲料をして開発されたのがはじまりで、一般的に広がったのは1994年「サントリーホップス(生)」の発売です。バブル崩壊による価格破壊で復活し、ビールよりも低価格で飲めるビール系飲料として成長してきました。発泡酒は味や香りの質は劣るものが価格の優位性が評判となり、ビールに代わる代用飲料として人気を博しました。

税率が麦芽の使用率によって変わるので、麦芽が少ない価格優先の発泡酒が次々と登場し、価格競争にもなりました。現在でも1缶(350㎖)で100円以下で販売されている発泡酒もあり、コスパ優先派に嬉しい商品が揃っています。

大手ビールメーカーの人気発泡酒

発泡酒4社の代表的な銘柄はスタイルフリー・本生(アサヒ)・淡麗(キリン)です。発泡酒は趣向を凝らした商品が多く、糖質オフやカロリーオフの健康志向系やビールの風味やテイストにこだわった本格派など、嗜好に合わせた商品選びができます。一番人気の発泡酒は1998年の発売以来、売り上げNO,1は淡麗(生)です。のどごしとキレにこだわり、日本人好みのビールテイストを貫いています。本格派としては本麒麟の人気が高く、キリンラガービールの味わいと変わらないと称されており、発泡酒市場ではキリンの人気が高いです。新ジャンルの台頭以降、下火傾向が続いている発泡酒ですが、2023年10月には<新ジャンル>のビール系飲料が発泡酒に品目変更されるので、今後より注目度が高くなるジャンルになるでしょう。

おすすめの発泡酒:HOPPING GARAGE シリーズ

出典:https://www.instagram.com/p/CO_62wrrdR2/

HOPPING GARAGE(ホッピンガレージ)はサッポロビールが発売している発泡酒ブランドです。「弱点だらけのビール」をコンセプトに、敢えてこれまで注目されなかった麦芽を使用し、美味しさではなく個性を追求したビールを開発しています。

マンゴーや柑橘系など数種類のフレーバーが楽しめるビールやチェリー味、チョコミント味など斬新なビールが多く、ホームパーティーで活躍しそうな面白系ビールがたくさんあります。「弱点だらけだけど世の中の出たんだぜ!」という現代らしいテーマで次々に開発されるビールは今後も注目です。

新ジャンル(第3のビール)とは?

新ジャンル(第3のビール)とは酒税法においてビール・発泡酒の基準を満たさない発泡性酒類のことで、ビールに類似したテイストの飲料を指します。新ジャンルはその他の醸造酒(発泡性)とリキュール(発泡性)の2品目に区分され、新ジャンル・第3のビールの呼称はマスコミによってつくられた造語です。2つの項目の違いは以下のとおりです。

その他醸造酒 ①糖類、ホップ、水及び麦芽以外の物品(穀物など政令で定めるもの)を原料として発酵させて酒類でエキス分が2度以上のもの

リキュール ①政令で定める発泡酒に、政令で定める麦由来のスピリッツを加えた酒類でエキス分が2度以上のもの

新ジャンルのビール系飲料は2023年10月の法改正により、これまで「その他の醸造酒」や「リキュール」に分類されていた新ジャンルが「発泡酒」に変更されます。発泡酒の定義に下記の一文が追加されることとなり、ビールに類似する商品は「発泡酒」の位置づけとなります。

㋩ ㋑又は㋺以外の酒類で、香味、色沢その他の性状がビールに類似するものとして政令で定めるもの

日本ビール検定公式テキスト

新ジャンルは現状ビール系飲料のなかでもっとも税率が安く、ビールの味わいと酷似している商品も多いので発泡酒よりも市場規模が拡大しています。最近売れているビール系飲料のほとんどは発泡酒ではなく、新ジャンルの場合が多いです。このような市場背景によって、これまで新ジャンルだったビール系飲料が発泡酒に品目変更するのかもしれません。

新ジャンルの人気商品

新ジャンル(第3のビール)は家庭向けのビール市場として主流になってきています。大手メーカーも発泡酒に比べ、新ジャンルの方が人気商品が多いです。各社の銘柄はクリアアサヒ(アサヒ)・本麒麟(キリン)・麦とホップ(サッポロ)・金麦(サントリー)が代表的といえるでしょう。ビールに近い本格的な商品としては「本麒麟」の人気が高く、キリンラガービールの味わいと変わらないと称されています。金麦はサントリーのビールで最も売り上げが高く、檀れいさんや石原さとみさんなどの有名女優のCMが印象的です。今後は発泡酒に品目変更が予定されていますが、もっとも勢いのあるビール市場といえます。

おすすめの新ジャンル:ホワイトベルグ

出典:https://www.instagram.com/p/Bn0jWWzla–/

ホワイトベルグはベルギー産のホップを使用した白ビールで、柑橘系のスッキリした味わいが特徴です。価格が100円前後で超ー激安発泡酒で、これまで一番お世話になっている発泡酒です。日本の多くのビールは下面発酵で醸造されるラガービールが主流で、のどごしやキレが重要視されていますが、ホワイトベルグは上面発酵のベルジャンビールで、麦芽の甘みとさっぱりした香りが特徴です。副原料としてコリアンダーシードとオレンジピールが使用されており、ハーブ系の味わいで女性に人気があります。スーパーの発泡酒コーナーによく売られているので、ぜひ一度試してみてください。

税率が統一化されて幅が広がるビール市場

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ビール・発泡酒・新ジャンルは、麦芽の重量率や副原料、税率が異なり、酒税法によって分類された項目です。かつては原料の違いによって、ビールとその他のビール系飲料は味の違いが顕著でしたが、現在ではビール系飲料もビールと同じように楽しめるようになりました。項目や価格に捉われず、ビールを広義に捉え、自分好みのビールをこれからも追及していきたいと思います。

これからのビールは2026年のビール類の税率統一にむけて、ビール業界の格社は主力銘柄のブランド強化やクラフトビールの開発を進めています。クラフトビール業界においては年々醸造所が増えており、各社オンラインネットショッピングを駆使して、販売を強化しています。最近ではビールの定期配送サービスも流行っており、毎月全国のクラフトビールがランダムに送られるサービスも人気があります。ビールの今後が楽しみです。

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